東京地方裁判所 昭和59年(刑わ)2391号・昭59年(特わ)2431号・昭59年(特わ)2859号 判決
右の者に対する有印私文書偽造、公正証書原本不実記載、同行使、所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官三谷紘出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
一 被告人を懲役一年八月及び罰金三五〇〇万円に処する。
二 未決勾留日数中六〇日を右懲役刑に算入する。
三 右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、肩書住居地において、栄光商事の商号で不動産業を営んでいたものであるが、津島己喜蔵(以下「己喜蔵」という。)の次女で、己喜蔵が昭和五一年ころ脳血栓で倒れて以後同人の不動産賃貸業に従事するとともに同人の財産管理にあたっていた分離前相被告人津島テル子(以下「テル子」という。)から、昭和五七年に至り、己喜蔵所有の東京都中野区丸山二丁目一九五八番一ほか八筆の土地(地上の車庫、家屋を含む。以下「本件不動産」という。)の売却方を依頼されたところ、これらを一旦被告人において合計五三九、二八七、四〇〇円で取得したうえ、富士建設株式会社及び丸藤商事株式会社に合計八〇六、七六二、五〇〇円で売却したことから、己喜蔵において五三九、二八七、四〇〇円の売却代金を、被告人において二六六、四七五、一〇〇円の転売利益をそれぞれ取得したが、
第一 テル子及び分離前相被告人三浦正久(以下「三浦」という。)と共謀のうえ、
一 己喜蔵の昭和五七年分の本件不動産の譲渡所得にかかる所得税を免れるため、保証債務の履行として資産を譲渡した場合にその履行に伴う求償権の行使ができない限度において、その所得につき所得税が課せられないことに着目し、三浦を債権者、木藤米吉(昭和五五年五月五日死亡)を主たる債務者、己喜蔵及び被告人らを連帯保証人とする金銭消費貸借契約証書を偽造するなどして己喜蔵が右保証債務を履行するために本件不動産を譲渡したように仮装しようと企図し、同五八年二月ころ、同都目黒区中央町一丁目九番六号所在のモナミ荘三号室河田エイ方ほか二か所において、行使の目的をもって、ほしいままに、市販の金銭消費貸借契約証書用紙を使用し、かねて三浦が所持していた名刺の裏面の木藤米吉の筆跡による「練馬区高野台三ノ二三木藤米吉」との記載及び「木藤」の印影並びに他の契約書の「木藤米吉」の印影をそれぞれ電子複写機で複写してこれらを右金銭消費貸借契約証書用紙の借主欄に貼付し、金額欄に「七億五千万円」と記入し、貸主欄に三浦の氏名を記載し、その名下に同人の印を押印したのちこれを電子複写機で複写し、更に右複写した金銭消費貸借契約証書用紙の連帯保証人欄に己喜蔵及び被告人の各氏名を記載しその名下に押印するなどしてこれを電子複写機で複写し、もって木藤米吉作成名義の署名押印のある同人を借主とする連帯保証人付金銭消費貸借契約証書一通(昭和五九年押第一四〇九号の5中の訴状添付の「甲一号証」と表示のある書面)の偽造を遂げ、
二 己喜蔵の業務及び財産に関し、同人の昭和五七年分の本件不動産の譲渡所得にかかる所得税を免れようと企て、前記のとおり、同人が同年にその所有不動産を売却したのは同人の三浦に対する金額七億五、〇〇〇万円の保証債務を履行するためであるかのように仮装しようとして連帯保証人付金銭消費貸借契約証書を作成し、これに基づき己喜蔵が右保証債務を履行する旨の起訴前の和解を行い、次いで、己喜蔵名義で三浦の銀行預金口座あてに合計六億五、〇〇〇万円を送金するなどし、更には、右保証にかかる契約の主たる債務者が死亡し相続人が無資力であるため右保証債務の履行に伴う求償権の行使ができないものとして求償権放棄書を整えるなどの方法により所得を秘匿したうえ、昭和五七年分の己喜蔵の実際の総所得金額が八六〇、六一五円あり、分離課税による不動産の長期譲渡所得金額が四四九、三五九、七八五円あったにかかわらず(別紙(一)修正損益計算書参照)、昭和五八年三月一四日、同都中野区中野四丁目九番一五号所在の所轄中野税務署において、同税務署長に対し、同五七年分の総所得金額が一、三九八、三九六円でこれに対する所得税額は医療費控除等を行うと納付すべき税額はなく、分離課税による不動産の長期譲渡所得金額は所得税法六四条二項によって零円となるから、これに対する所得税額はない旨の虚偽の所得税確定申告書(前同押号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額一五四、三三六、五〇〇円(別紙(二)税額計算書参照)を免れ、
三 前記のとおり三浦に対する保証債務の履行のために本件不動産を売却したように仮装したため、テル子及び津島ユリ子が本件不動産の売却代金で建築した共同住宅各一棟の資金の出所を税務当局に調査され、前記脱税工作が発覚するおそれがあったことから、その事実がないのに、三浦からの借入金により右建築資金を賄ったように仮装しようと企図し、昭和五八年一〇月三日、同区野方一丁目三四番一号所在の東京法務局中野出張所において、情を知らない司法書士今西敬昌をして、同出張所登記官に対し、テル子、己喜蔵及び津島ユリ子ら三名が三浦から同年三月二五日、一口一億円、三口で合計三億円を借り受けた旨の虚偽の金銭消費貸借契約を登記原因とし、これに基づく連帯債務の担保として右己喜蔵等が所有する別紙(三)物件目録記載の不動産に、三浦を抵当権者とし抵当証券発行特約付抵当権を設定する旨の抵当権設定登記申請書三通及び権利者を三浦とし右債務の不履行を停止条件とする賃借権を設定する旨の停止条件付賃借権設定仮登記申請書一通を提出させ、そのころ、情を知らない右登記官をして、右各申請書に基づき、同出張所備付けの不動産登記簿原本に、前記物件目録の「不実登記の内容」欄記載のとおりそれぞれ不実の記載をさせ、即時これを同出張所に備え付けさせて行使し、
第二 三浦と共謀のうえ、被告人の昭和五七年分の本件不動産の譲渡等による事業所得にかかる所得税を免れようと企て、本件不動産の転売利益を除外するなどしてその所得を秘匿したうえ、同年分の被告人の実際の総所得金額が一三、四三三、六四五円あり、分離課税による土地の譲渡等にかかる事業所得金額が一九〇、九一一、八〇〇円あったにかかわらず、(別紙(四)修正損益計算書参照)、昭和五八年三月一四日、同都東村山市本町一丁目二〇番二二号所在の所轄東村山税務署において、同税務署長に対し、同五七年分の総所得金額が一四、四八四、〇五一円でこれに対する所得税額が四、一二一、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(前同押号の6)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額一五一、八五四、五〇〇円と右申告税額との差額一四七、七三三、五〇〇円(別紙(五)税額計算書参照)を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一 被告人の当公判廷における各供述(第六回、第八、九回公判期日におけるもの)
一 分離前相被告人津島テル子の検察官に対する昭和五九年七月一日付、同月一八日付、同月一九日付、同月二六日付、同月二八日付、同年八月四日付、同月六日付、同月八日付各供述調書
一 津島ユリ子、津島房次郎、猪股キヌイ、小川水宝(二通)、池隆、奥村秀雄(三通)、間宏(二通)、河原典忠、渡辺瑞夫、村松英樹(二通)、大坂勝利、大森誠造、片柳輝一、金内秀夫(昭和五九年七月一日付、同月一六、一七日付、同月二〇、二一日付、同月二二日付、同年八月二日付、同月三日付、同月四日付二通)、野口忠、青木孝、渡辺喜之、久留茂(二通)、久留八千代、藤田博、菊田操、岡保新一、滝沢十三作(昭和五九年七月一八日付、同年八月七日付二六枚綴りのもの)、長井昌克(二通)、真木光夫、下田祐輔、富成昭英、小森教尚、篠原晴信(昭和五九年七月三一日付)、海老沢徹、新田一美(昭和五九年七月一五日付)、油井とし子、桜井まち子の検察官に対する各供述調書
一 和解事件記録(謄本)
一 押収してある東京地方裁判所昭和五八年(ワ)第一七八四号保証債務請求事件記録一冊(昭和五九年押第一四〇九号の5)
判示第一の各事実につき
一 被告人の当公判廷における供述(第一回公判期日におけるもの)
一 被告人の検察官に対する昭和五九年七月五日付、同月一二日付、同月一四日付、同月一五日付、同月一六日付、同月一七日付、同月一八日付、同月一九日付、同月二〇日付、同月二二日付、同月二三日付、同月二四日付(三通)、同年八月二日付、同月七日付、同月九日付、同月一三日付各供述調書
一 分離前相被告人津島テル子(昭和五九年七月七日付)、同三浦正久(昭和五九年七月五日付、同月一四日付、同月一五日付、同月一六日付、同月一七日付、同月一九日付―二通―、同月二〇日付―二通―、同月二一日付―三通―、同月二二日付、同月二四日付、同月二六日付、同月三〇日付、同年八月八日付、以上いずれも謄本)の検察官に対する各供述調書
一 木藤稔枝(二通)、中嶋悟、木藤晃、築幸枝、河田信幸(二通)、河田ヱイ(二通)、鈴木克己の検察官に対する各供述調書
一 検察事務官宇佐美忠章作成の捜査報告書
一 登記官作成の捜査関係事項照会に対する回答書二通
一 民事第一審訴訟記録(謄本)
一 押収してある昭和五七年分の所得税確定申告書一袋(前同押号の1)、保証債務の履行のための資産譲渡に関する計算明細書等一袋(同号の2)、昭和五七年分所得税青色申告決算書等一袋(同号の3)
判示第一の一の事実につき
一 検察事務官星野洋介作成の捜査報告書二通
一 科学警察研究所作成の鑑定書二通
一 練馬区谷原出張所長作成の印鑑登録印影写
一 押収してある金銭消費貸借契約証書写等一袋(前同押号の4)
判示第一の二の事実につき
一 収税官吏作成の次の各調査書
1 譲渡収入調査書
2 取得原価調査書
3 測量費調査書
4 登録免許税調査書
5 司法書士報酬調査書
6 立退料調査書
7 仲介手数料調査書
8 謝礼調査書
9 弁護士報酬調査書
10 立木等撤去費用調査書
11 収入印紙代調査書
12 特別控除額(所法六四条二項)調査書
13 特別控除額(措置法三一条三項)調査書
14 減価償却費調査書
一 検察事務官木村善治作成の昭和五九年一一月一六日付捜査報告書
判示第一の三の事実につき
一 栗原敏、今西敬昌、打保庸弥、本田宗樹、阿部直、斎藤明、播磨謙之、篠原晴信(昭和五九年七月三〇日付)の検察官に対する各供述調書
判示第二の事実につき
一 被告人の当公判廷における供述(第三回公判期日におけるもの)
一 被告人の検察官に対する昭和五九年九月一九日付、同月二二日付、同月二三日付、同月二六日付、同月二八日付、同年一〇月一日付、同月四日付、同月九日付(二通)各供述調書
一 分離前相被告人三浦正久の検察官に対する昭和五九年一〇月五日付、同月九日付各供述調書謄本
一 新田一美(昭和五九年八月六日付、同月八日付)、池田和隆、滝沢十三作(昭和五九年八月七日付-一六枚綴りのもの-、同年九月二二日付)、金内秀夫(昭和五九年七月一九日付)の検察官に対する各供述調書
一 収税官吏作成の次の各調査書
1 売上高調査書
2 手数料収入調査書
3 仕入調査書
4 支払手数料調査書
5 給料賃金調査書
6 利子割引料調査書
一 検察事務官木村善治作成の昭和五九年一〇月四日付捜査報告書三通
一 押収してある所得税の確定申告書(57年分)一袋(前同押号の6)、青色申告書類つづり一綴(同号の7)
(法令の適用)
一 罰条
判示第一の一の所為につき刑法一五九条一項、六〇条、判示第一の二の所為につき所得税法二三八条一、二項、二四四条一項、刑法六〇条、六五条、判示第一の三の各所為中、虚偽申立公正証書原本不実記載の点は同法一五七条一項、罰金等臨時措置法三条一項一号、刑法六〇条、同行使の点は同法一五八条一項、一五七条一項、罰金等臨時措置法三条一項一号、刑法六〇条、判示第二の所為につき所得税法二三八条一、二項、刑法六〇条に該当。
二 科刑上の一罪の処理
判示第一の三の各虚偽申立公正証書原本不実記載は一個の行為で数個の罪名に触れる場合であり、各虚偽申立公正証書原本不実記載とその各行使との間にはそれぞれ手段・結果の関係があるので、刑法五四条一項前段、後段、一〇条により結局以上を一罪として犯情の最も重い別紙(三)物件目録番号2の物件の<1>抵当権設定(昭和五八年一〇月三日受付第二二四一〇号)にかかる虚偽登記簿原本行使の罪の刑で処断。
三 刑の選択
判示第一の三の罪につき懲役刑選択、判示第一の二及び第二の罪につきいずれも懲役刑及び罰金刑併科。
四 併合罪の処理
刑法四五条前段、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条(最も重い判示第一の一の罪の刑に加重)、罰金刑につき同法四八条二項により処断。
五 未決勾留日数の算入
刑法二一条。
六 労役場留置
刑法一八条。
(量刑の理由)
被告人は、昭和四三年ころから独立して不動産業を営んでいたものであるが、昭和五四年ころ父親が病気で倒れたために父親の不動産の管理、処分等を行っていたテル子を知人の紹介により知り、以後同女の管理するアパートの賃借人を斡旋するなど同女のために協力するとともに、津島家において同女及び妹の津島ユリ子と次兄の津島房次郎との間で、己喜蔵所有にかかる不動産の管理等をめぐって争いがあったことから、これをテル子らの有利に解決するため同女らの相談相手となり、同女らも被告人以外に相談する者がいなかったために被告人を全面的に頼りにしていたものである。
本件は、右のように被告人を頼りにしていたテル子から、己喜蔵及び長兄津島藤治郎の入院費用並びにテル子らの生活費を安定して得ることができるようにするための共同住宅の建築資金等を捻出するため、本件不動産の売却方を依頼された被告人が、テル子の無知、無思慮につけ込み、被告人自ら中間取得者となって二億六六〇〇万円余の法外な転売利益を得たうえ、右不動産取引によって取得した自己及び己喜蔵の各所得について脱税を企て、判示各犯行に及んだというもの、すなわち、被告人は自己及び己喜蔵の所得税を免れる目的で、三浦の発案に基づき、すでに死亡し本件と全くかかわりのない第三者を借主、三浦を貸主、被告人及び己喜蔵らを連帯保証人とする金銭消費貸借契約証書を偽造したうえ(判示第一の一の犯行)、右三浦に対する己喜蔵の保証債務を履行するため、同人が本件不動産を直接富士建設株式会社及び丸藤商事株式会社に譲渡したことにして被告人には転売利益が生じなかったことにするとともに、借主たる第三者に対する己喜蔵の求償権を放棄したことにし、更には右のような脱税工作が真実であるかのように仮装するため、簡易裁判所を利用して内容虚偽の即決和解を成立させるなどして前記各所得税を免れ(判示第一の二及び第二の犯行)、更にはテル子らが本件不動産譲渡により取得した売買代金で建築した共同住宅の資金の出所を税務当局に調査されることによって右脱税の事実が露見することを危惧し、テル子らが三浦から右建築資金を借用したように仮装するため、虚偽の抵当権設定金員借用証書に基づく抵当権設定登記等の申請をしてその旨登記簿原本に不実の記載をさせ、これを備え付けさせた(判示第一の三の犯行)ものであって、特に被告人らの企図した脱税の態様が右のとおり大胆かつ徹底したものであるのみならず、脱税額が被告人分が一億四七〇〇万円余、己喜蔵分が一億五四〇〇万円余の合計三億円を超えるものであり、またほ脱率も被告人分が約九七パーセント、己喜蔵分が一〇〇パーセントという悪質極まりない大型脱税事犯である。
被告人は、本件につき、テル子から税金を納めても手許に三億円くらいは残るようにしてほしいと再三懇請されたが正規の税金を納めたのでは同女の希望どおりにならなかったために己喜蔵分の脱税を考えるようになり、これが主な契機となって本件各犯行を実行するようになったかのような弁解をしている。しかしながら、被告人が前叙のような法外な転売利益を自分のものとしなければ、脱税を含む本件各犯行に及ばずともテル子に対し望みどおりの収入を取得させることができたことはいうまでもないところである。また被告人は、捜査段階において、単に本件不動産取引を円滑に進めるという理由からだけでなく、自己の転売利益に対し課せられる税金対策からも知人をダミーとして介在させたものであり、また本件で取得した利益の多くを海外旅行等によって使い果たし納税資金に窮するようになったために自己の所得に対する脱税を考えるようになったと述べているものであって、被告人自身において自己の所得に対して当初から脱税の意図が存したことは明らかである。そして以上のほか、本件脱税工作において被告人が支出した金額に比しテル子において出捐した金額がはるかに多く巨額に上ること、被告人は本件により得た利益を海外旅行等の遊興費や高級腕時計及び自動車の購入代金にあてるなど専ら自己のために費消していること等を総合すると、被告人は、自己の利欲をみたすために、テル子が世事に疎いうえ自分を頼っていることにつけ入り、同女に対しては被告人が専ら自己のために助力してくれているものと信じ込ませながら同女をも加担させて本件各犯行を遂行し莫大な利益を取得したものといわざるを得ないのであって、右のような本件被告人の犯行に対しては厳しく非難されてしかるべきである。
更に被告人は、右のように脱税を企図して本件各犯行に及んでいることが明らかであるのに、査察をうけた以後においても関係者の取調等が進んで被告人の弁解が通用しなくなるまで犯行を認めなかったばかりでなく、三浦らと相謀り、捜査当局からの追及をかわすための工作に狂奔し、罪証隠滅を図っていたものである。
以上の次第であって、右の各事実、ことに被告人は主として自己の利欲をみたすために、本件当時被告人以外に相談する適当な者がなく、被告人を頼るほかなかったテル子の無知、無思慮につけ込み、一三〇〇万円もの手数料のほかに本件不動産の中間取得者となって二億六六〇〇万円余の法外な中間利益を取得したうえ、自己及び己喜蔵の所得税のほ脱を企図し、被告人らの意のままに従わざるを得なかったテル子に対し更に莫大な脱税工作資金を出捐させるなどして本件各犯行を敢行したものであって、脱税についてはそのほ脱額が巨額であるのみならず、ほ脱率も一〇〇パーセントあるいは一〇〇パーセントに近い悪質極まりない犯行であること、本件各犯行及び罪証隠滅工作の具体的方法については専ら三浦が案出し、これを推進したものであるとはいえ、被告人自身もこれを了解したうえ、かなり積極的に関与しているものであって、テル子に働きかけ同女が加担して本件各犯行を完遂させるについて重要な役割を果していること等の事実を勘案すると、被告人はその後反省し、当公判廷においても公訴事実を認め、自己の本件所得税更正処分に対する異議申立を取下げ、本税分としてすでにその一部を納付し残余の国税及び関連地方税の納付についても計画を立てるなどしていること、被告人は本件により相当期間勾留されていること、被告人にはこれまでにとりたてるべき前科、前歴のないこと、その他被告人の現在の家庭の状況等本件の審理に顕われた被告人のために有利に斟酌すべき一切の事情を最大限に考慮してもなお、被告人に対しては主文掲記の実刑は免れないところである(求刑懲役三年及び罰金五〇〇〇万円)。
よって、主文のとおり判決する。
昭和六〇年一月一七日
(裁判官 羽淵清司)
別紙(一)
修正損益計算書
津島己喜蔵
自 昭和57年1月1日
至 昭和57年12月31日
<省略>
別紙(二)
税額計算書
昭和57年度分
<省略>
別紙(三) 物件目録
<省略>
別紙(四)
修正損益計算書
桜井恒雄
自 昭和57年1月1日
至 昭和57年12月31日
<省略>
別紙(五)
税額計算書
昭和57年分
<省略>